「ったく、このドジ!」
「うるさいわねぇ///さっきから、同じ事ばっかり!」
「あ゛ー…骨が折れる。」
「ぅもー///!!!だから、自分で歩くって言ったでしょう!?」
何やら表が騒がしい。
もしや、二人が帰ってきたのだろうか?
取り込んだ洗濯物を部屋の隅に寄せて、玄関へと足を運んだ。
そして。
そこで拙者が見たものは。
「あっ、剣心!助けてくれ…もうダメだ。骨が砕ける・・・。」
「もぅっ///失礼ねっ!だからいらないって言ったじゃないの///!」
「ど・・・如何したでござるか;;?」
真っ赤になって怒る薫殿が・・・弥彦に負ぶられている。
さっぱり訳が分からず唯目を丸くする拙者に、弥彦が薫殿を負ぶったまま薫殿の左足を持ち上げて見せた。
袴の裾から見える彼女の足首は赤く腫れ上がっていて。
此れは何処かで挫いたな。
「剣心っ!ほらよっ!」
そう言って弥彦はいきなり拙者に向かって、負ぶっていた薫殿を投げつける。
十分な体勢では無かった為、薫殿を何とか抱きかかえたものの、そのまま地面へと後ろ向きに倒れ込んでしまった。
そんな弥彦の行為に対して、薫殿はまた真っ赤になって怒る。
「弥彦っ!女の身体は大事に扱って頂戴///!」
「どーこが女だ!」
「な…んですってー!?・・・っ痛;!」
「これこれ薫殿、無理はいかんでござるよ。」
背中が痛くて起き上がれないので、取り敢えずめいいっぱい手を伸ばして、薫殿の肩をポンポンと叩いた。
すると、薫殿はようやく気付いたのか。
今まで以上に真っ赤になって、拙者の上であたふたと動き回りだす。
「っきゃーっ;;///ご…ごめんなさい;私ったら剣心の上に・・・;;///」
「いや、それは構わぬが・・・。か・・・薫殿、あんまり動かれると・・・その・・・」
背中に振動が伝わって、痛い・・・。と言いたかったのだが。
最早、今の薫殿には聞こえまい・・・:
「ごめんね、ごめんね。すぐに退くから・・・っ///」
「いや、薫殿;急がなくて良いから、ゆっくり頼むでござる。背中が・・・ぐえっ;」
仕様の無い御仁でござるな;
この痛みから逃れる道は無いか・・・。
そう考えていた拙者の頭の中に、ある一つの事が浮かんだ。
「剣し・・・っ!?きゃっ///」
ふわり。
薫殿の身体を抱き引き寄せると、面白い事に薫殿の動きがピタリと止まる。
「け…けけけけけけ剣心///?わ…私、そのっ///重いからっ///あの…;」
思わず噴出しそうになるけれど、噴き出したら薫殿が怒るので我慢した。
「拙者、ちと背中が痛くて。痛みがひくまで、もう少しこのままで・・・。」
「え・・・///?ぅ・・・うん・・・///」
背中の痛みなど、もう疾うの昔に消えている。
ただ薫殿の身体を包み込む自分の腕が、薫殿の感触を覚えてしまった。
自分の我儘で・・・薫殿の身体をもう少し抱いていたくて。
そんな拙者の浅はかな心理に気付いているのか、いないのか。
薫殿も先程からじっと、拙者に身体を預けてくれている。
この時間がずっと続けばいい・・・。
って、人生そんなに上手くいくわけが無い。
突如、門がギギギ・・・と音を立てた。
余韻に浸りすぎて、その人物の気配に気付く余裕も無く。
「お邪魔しますー。・・・って、あらぁ?剣心はんに薫ちゃん。そんなとこで何してはりますん?
あら///!もしかしてうち、エエとこ邪魔してしもたんやろか!?」
「た…妙さん///!」
「妙殿っ///;!?」
不味い・・・非常に不味い。
「堪忍してや。そやけど、お二人さん。 こないな外で、やらはるんはちょっと・・・」
「違うー!違うのよ、妙さん///誤解よっ///」
「そ…そうでござる、妙殿。拙者がここで居眠りをしていたら、薫殿が様子を見に・・・」
拙者も薫殿も必死の弁解。
しかし、そんな誤魔化しが通用するはずも無く。
「はいはい、ご馳走様。大丈夫。うち、ちゃーんと黙っとくさかい。 ほな、ごゆっくりー。」
「妙さーん///!!」
「妙殿ー///!!」
妙殿は帰ってしまった。
腹を括るしか・・・ないか;
すまぬ、薫殿。
多分、拙者の予想で行くと・・・;;;
後日この事が街中の噂に発展していたのは、言うまでも無い。
>>終
2004.12.17