「薫殿は良い匂いがするでござるな。」



骨抜きにされただるい身体にぼんやりとした意識の元、私の頬をやんわりと撫でながら、彼はそう呟いた。


お互いを確かめ合う行為のあとは、いつもそう。
程よい疲労が、私の目蓋を重くして心地良い眠りへと誘う。

初めて肌を合わせた日から、一体どれだけ互いを欲したのだろうか。
言葉に出来ない切ない感情を巻き込んで、素肌の上で事件が起こる。


目の前には柔らかく微笑む彼の顔。
しあわせ
言葉で言い表せないくらい。


剣心の掌の温度を感じながら本能のまま意識を手放そうとした瞬間、胸元に何か熱いモノが触れた。



「け///・・・けんしん///?」


「このまま・・・眠りたい・・・」


「っ///・・・くすぐったいよ・・・///」



私の胸元に顔を埋めて、剣心はわざと熱い吐息を交える。
私の感情を揺さぶる為に

そんな彼の甘ったるい仕草が大好きで、心地良いのだけれど、 それをまだ頭の中で快感と定義付けるには恥ずかしくて。

何とは無しに身体を捩ってみたり、剣心の身体を少しだけ剥がそうと試みたりしてみる。



「薫殿、もっかい・・・」


「だ///ッ、・・・だーめー///」

「おろ。・・・どうしてもだめ?」


「どうしてもだめ///」


「絶対にだめ?」


「っ///・・・・ぅー;;;///もぅ;;」



半ば呆れ顔で剣心の頭を包み込むと、剣心は嬉しそうにふわりと微笑んだ。
この普段との差がたまらなく可愛い。



「薫殿・・・良い匂い・・・」


「や///だ、そんなわけないでしょう?・・・・っ、ぁ…っ」


「温かい・・・出来る事ならば、ずっと此処に居たいでござるな・・・」


「け・・・しっ///っ、あ…」



貴方の熱に包まれて、今宵私はゆっくりと貴方の中へ溶けていく。
貴方と二人で、このまま ずっと

そこは二人だけの快楽の世界
快楽と歓びだけが存在し、それを本能のままに感じる、桃源郷





>>終

2005.5.22