目を開けたら、腕の中にはまだ夢に浸る君がいて

「おはよう」と一人小さく呟いて、再び夢の中へと堕ちていく

共に朝餉を食して、洗濯をし、たまには買出しに出たりして。

ありふれた、でも幸せな生活。

その日その日を笑顔で過ごせるなんて、よくよく考えてみればとても幸せな事じゃないんだろうか?

夕餉を食して、落ち着いた後にそっと君の手を引けば

君は長い睫毛をそっと伏せて、上気した瞳を泳がせる。

引き寄せても首を縦に振らないのなら、その唇を塞いで

呼吸を追い詰めて、無理やりにでも合意させる。

君が漆黒の空間の中で、喉から声を引き攣らせたなら

その乾いた肌に潤いを絡ませて

そうして事を終えた後に、君は眠気眼でぽつりと呟く。


「剣心のばか・・・///」

「おろ?」

「ばかっ///ばかばかばかーっ///」

「おろろ;;?ひどいでござるなぁ;」


すると彼女はだるいであろう身体を持ち上げて、俺の頬を力いっぱいひっぱった。


「い…いひゃいでほはるほ、かほふほほ;;」

「私の話、聞いてたの///?」

「?明日の出稽古の事でござるか?」

「そっ///それもだけどっ…///夢中になってて、気付かなかったんでしょ///!?」

「おろ?」

「うーっ///もぉいい!私寝るっ///おやすみなさい!」

「おやすみ。」


怒ってもちゃんと「おやすみ」をいう薫殿は、とても可愛らしくて

だから時々、悪戯をしたくなってしまう。

腕の中で眠る華奢な身体が奏でる寝息を耳にすると、こちらにまで一気に眠気が襲ってきて。

霞みゆく意識の中で、先程の情景が頭の中に浮かぶ





「け…ん、しんっ・・・」

「ん・・・?」

「ず・・・と、側に居て…ね。もう・・・一人にしな・・・で・・・っ」

「薫ど・・・」

「おい・・・てかれる・・・のは、も・・・や…なのっ///」





時々、薫殿はこんな事を言う。

毎晩のように身体を預けて…それでも、信用していないのだろうか。

まさか自分は、好いてもいない女を抱くなどしない。

初めて身体に触れることを許してくれたあの日、自分の言わんとしていることは分かってくれていると思っていたのに

否、信用などという問題ではないのかもしれない。きっと違う。

もっと深く、根本的なところで何かが絡みついているんだ。

その絡みを作り出した原因に、おそらく自分も深く関わっている。





時代はかわる。人もかわる。



ゆっくり…時には早く、しかし決して止まることなく、ただひたすらに時は流れる。



そうしていつか、二人の最期が来るかもしれない。



もしも、その時がやってきたとしても、時の流れを受け入れる事が大切で

小さくて弱々しい君がその時に耐えられるように、悲しみを乗り越えられるように



今を、この時を一生懸命愛して



でも自分はいつまでも、君を手放す気などさらさら無く

今は、今を、二人で大切に生きていきたい。

ただ、願わくは





止めどなく流れる今を-----------




>>終

御題提供:美沙希様
2005.2.6