厚い雲がずしりと気持ちを押し下げて、じっと私を圧迫している。
空を覆い尽くすそれから逃げる術はなくて、私は何とはなしに一つ溜息を落とした。

ふわふわと
でも、確実に
私はその通りになりそうな予感がしていた。

だって空はこんなにも薄暗い。
冷たくて、重たい雲が、私に降伏を迫っているようだった。

「何か、面白いものでも?」

枯れるような声とともに背後から伸びてきた冷たい掌が、私の腹部をすべり腰をとらえて引き寄せる。
細く長い指先はまるで暖をとるかのように、私の腹部に沈み込み、そのまま動かなくなってしまった。

私は何も答えない。
彼もそれ以上は何も聞かない。
静かな空間の中で、ただただ腹部に埋められた指先だけが、ちらちらと動いている。

果てなく続く挑発に
乗せられたのは、私
その気になったのは、私

ちらりと後ろを振り返れば、満足そうにほほ笑む人がいて
その手招きに素直に従えば、私の身体は彼の下へと潜り込む。

何故かふいに絡む指先
外せない私
いつもより甘い口付けと
それに甘えてしまう身体
こんな曖昧な気持ちのまま
確かな彼の気持ちを掴めるはずはないのに

それでも私は術を知らない。
彼の視線を、私に引き留める方法を。
きっと彼は気にしてはいないのだろうけれど。
それでも私は気にしてしまう。

感じられる確かな証拠は、物理的なつながり。
縦に揺れて反り上げて、冷えた身体から熱が生まれる。


あなたの見る夢まで束縛したい


たまにそんなことを考える、私がいる。




>>終
2009.01.16
御題提供:つらら様

愛していると、言ってくれ。