「薫殿。かーおーるーどーの!」
「ふ…ぇ?けんしん?」
今朝目が覚めると、視界が剣心でいっぱいだった。
でもぼーっとした頭は流れる情景を移し変えていくのが、実に下手で。
声は少しはなれたところでしているのに、目の前には剣心の残像。
しかもとっても生々しい。
ころりと寝返りを打ってはみるものの、布団から出ようという気はさらさら起こらなくて。
布団を巻き込んで更に縮こまる私を見て、剣心が慌てて布団を剥がしにやってくる。
実はそんな剣心を、心の奥底で待っていたりして。
「薫殿。ほらー、朝でござるよ?今日は久々に天気が良いでござる。」
穏やかな彼の口調は、まるで子守唄のよう。
その聞き慣れた愛しい人の声質は、私の眠気を促進させるだけなのよ。
「ぅん・・・。もぉちょっと・・・」
「困った御仁でござるなぁ;;///」
そう言いながらも貴方は、決して私を諦めようとはしない。
そう自負しているからこそ、私は本能のまま眠気を受け入れる。
「私がこんなに眠たいのは、誰の所為?」
「お゛ろ゛っ///!?そ…それは、っ;;その…///」
そうよ、貴方の所為よ。
貴方が明け方近くまで、私を離してくれなかったから。
今の貴方からは考えられない、もっともっと深く艶を帯びた貴方。
私がこうやって布団に包まっているのも、素肌を晒した私を貴方が布団の中に置いて行ってしまったから。
「ね、剣心も もう少しだけ寝よ?」
「・・・///;;では、少しだけ。」
久しぶりに暖かな春の日差し。
もうすぐ春がやってくる。
こうして貴方と肌を合わせて互いを温めあう事も、なくなってしまうのかしら?
ならばせめて。
もう少しだけ残り僅かなこの季節を、仲睦まじく過ごしましょう?
>>終
御題提供:陽利様
2005.2.27