橙色の夕暮れ空に、薄く細かな雲がふわふわと浮かんでいる。
明日の天気は・・・?
ふと、そんな事を思った。
「剣心、明日は晴れる?」
洗濯物を取りこんでいる剣心にそう尋ねると、彼は得意げに笑みを浮かべて
「どっちだと思う?」
聞き返してきた。
「賭ける?」
ちょっと真面目な声でそう言うと、剣心はちょっとだけ困ったような顔をする。
「いいでござるが…一体何を?」
「私!!」
そう言った瞬間、剣心は手に持っていた洗濯物を、ばさばさと地面に落とした。
「あーっ;;折角綺麗に洗ったのに!」
まぁ、洗ったのは剣心だけど。。。
呆然とする彼の周りに散らばった洗濯物を、砂を払いながら拾い上げる。
幸い地面が濡れていなかったので、砂さえ落とせば汚れなど気にならなかった。
「え…えらく、自信満々でござるなぁ;;」
「剣心は?何を賭けるの?」
拾い終えた洗濯物の山を剣心の腕に積み上げて催促する。
「では拙者も、拙者を賭けるでござる。薫殿はどちらに賭けるでござるか?」
「先に決めて良いの?」
「どうぞ。」
そう言った剣心の目が、もう既に勝ったと言っている様で少し悔しい。
「じゃあ・・・晴れ!」
「・・・・・・では、拙者は雨。楽しみでござるなぁ、明日の天気。」
そう言って台所に消えていった彼の後姿を見送った後に、少しだけ胸に不安がよぎった。
めげるな、薫!
明日はどうしても、晴れてもらわなくちゃ困るのよ!
空に向かって胸の前で手を組み合わせてじっと祈る薫の姿を、剣心が笑いを堪えてそっと見ていたのは
誰も知らない、二人だけのある夕暮れのお話。
>>終
御題提供:秋桜様
2005.1.3