いつの間にか…この想いは熱を帯びて

君へ向かって、どんどん大きくなる。

自分がその気にならなくても、勝手に都合の良いように膨れ上がってしまうのがこの想いの厄介な部分で。

一端自覚すると一気に加速して、止まるところを知らない・・・。







「おろ?弥彦。そろそろ赤べこの時間では?」

「んー?…あぁ。・・・なぁ、剣心。」

「ん?」

「剣心は…。薫の何処が好きなんだ?」

「おろ!?」


うっわ、すっげー間抜けな顔。
こんな剣心見たことねぇよ。


「だから、剣心は薫の・・・」

「ちょ…ちょっと待つでござるよ、弥彦;如何したでござるか?いきなり。」

「好きなら、理由くらいあるだろ?薫の何処が好きなんだよ?」


半ばヤケになっていた。
そんな俺を見た剣心は、思いついたようにさらりと言ってのける。


「・・・弥彦。好いた女子でもいるのでござるか?」


途端に心臓がドキリと鳴った。
微笑む剣心の表情が、凄く恐ろしいものに見えた。
手に持っていた竹刀を縁側に置いて、俺は一目散に駆け出す。


「い・・・行ってくるッ!」

「弥彦ぉ;!?」


剣心に聞いた俺が間違いだった。
でも、どうしても男の意見が聞きたくて。

好きなら理由があるはず・・・。
理由が分かれば、このモヤモヤした気持ちの正体が分かるはず。
厄介で…頭が痛くて。

この変な感じの正体は何だ?
上がった息を整えながら地面を睨んでも、気分が悪くなるだけだった。


「弥彦くん・・・?」


聞きなれた控えめなその声に、ハッと顔を上げる。
自分より大きな荷物を担いで、目の前に立っていたのは


「燕・・・。」

「すごい汗・・・。まだ時間十分あるのに、走ってきたの?」


そう言って荷物を地面に置いて、燕は懐から出した手拭いで俺の額の汗を拭ってくれた。

いつの間にか俺の方が背が少し高くなって・・・。

以前とは違った目線のぶつかり方に、鼓動がいきなり速さを増す。


「こ…れっ///何処に運べばいいんだ!?」

「え…っ?あ…と、えっと、う…裏の物置…。」


いきなり俺が大声を出したものだから、吃驚したのだろう。

燕はいつも以上にどもりながら、必死に物置の方を指差していた。


耳が熱くなるのが分かる。
何か嫌だ、この感じ。
慣れなくて…。如何したらいいか、分からなくて。

馬鹿みたいにデカイ荷物で顔を隠して、物置へと急ぐ。

そんな時いきなり後ろから着物をひっぱられて、危うく引っくり返りそうになった。


「燕っ・・・///!!」

「今日も一日、頑張ろうね。」




燕の笑顔に胸が詰まる。




う…わ・・・;

やべ・・・;



走り去っていく燕の後姿を何とも情けない格好で見つめる俺。

あぁ・・・。
俺・・・
もしかして、これって・・・


いや、そうだ。
仮定じゃなくて、確定なんだ。



俺は・・・燕の事・・・












>>終


御題提供:秋桜様

2004.12.19