「薫殿、この…暦の×印は…?」
そう言ってさも不思議そうに、剣心が尋ねた。
彼自身、色々と考えたのだろう。
暦の前で仁王立ちになって、しばらくの間それと睨み合いを続けていた彼も
結局×印の意味が分からなかったのか、答えを求めてきた。
いつもの飄々として大人な彼とは全く違った態度。
この普段との差が何とも言えず、可愛らしい。
「さぁ、何でしょう?」
「うーん…薫殿の誕生日ではないし、弥彦の誕生日でもないし・・・」
「誰かの誕生日ではありません。」
「おろ。」
”誰かの誕生日”に余程自信があったのか、剣心はすごく驚いた表情で吃驚している。
如何してこの人、こんなに面白いのかしら・・・
「・・・分からぬ。」
「手掛かりその一。私と剣心の記念日。」
「おぉ!」
「え?分かったの?」
「薫殿のお父上の誕生日でござろう?」
_│ ̄│●・・・だから誕生日じゃないって言ってるじゃない・・・
どうせこんな事だろうと思った・・・。
「違うわよ!だから、剣心と私の…って言ってるでしょう!?」
「おろ?拙者と薫殿の?」
「そう。」
「む゛ー・・・」
なんて声で唸るのよ…;;
「正解したら、記念日だから良いものあげるね。」
「良いもの?」
「そう、良いもの。」
「それは・・・・」
剣心が言いかけた言葉の続きが気になって、ふと視線を剣心に向ける。
あまり変わらない背丈なので、少し目線を上げればすぐにぶつかって。
揺れる髪の合間を縫って目に届く光も、静かな吐息も、熱い視線も
二人の間の僅かな距離で、甘く溶けて消えていく。
「こういうもの…で、ござろうか?」
目の前の笑顔を見て、初めて感じ始める感触。
柔らかくて、温かくて、ふにふにしてて。
男の人の匂いをすぐ側に感じて、まるで貧血を起こしたみたいに目の前が真っ白になってくらくらする。
「あ…///っと…その・・・///;;」
どうして分かっちゃったのかしら…;;何て、焦りながらも呑気に思っていると、
心臓の鼓動がまだ収まりきらないうちに、剣心の手がすっと腰に伸びてきた。
「ちょ…///剣心っ;」
久しぶりに現われた積極的な彼に、少しだけ落ち着いた心臓はまた忙しなく動き始めて。
反射的に抵抗をしてみるものの、そんなものは嘘だと知っている彼は更に身体を近づけてくる。
そうすれば私が貴方の思うが侭になる事を、貴方は十分知っているから。
スルスルと音を立てて解けていく帯が、壁際に追い詰められた薫の足元でとぐろを巻く。
「一年というものは、実に早いでござるな。しかも、薫殿をこんなにも変えてしまう。」
崩れかかった胸元の隙間から覗く赤い痕にそっと口付けて、剣心は満足そうに微笑んだ。
「〜っ///…今日だけだからね・・・;;///」
「では…今日は良いのでござるな?拙者、遠慮なく頂くでござるよ?」
選択の余地を与える振りをして、次の瞬間には私の手首を壁に押し付けているくせに。
細い身体をしている割には、手の力はすごく強くて ちょっと痛いんだから。
痛みと快感の矛盾。
でも、手加減しないで。
人生少しくらい矛盾がある方が、面白いものでしょう?
>>終
御題提供:さら様
2005.2.16