ある穏やかな昼下がり。
むくむくと見事な入道雲が空をのんびり移動して行く。
そんな入道雲を見つめながら、縁側に腰掛けて中睦まじく笑いあう二人。
手には湯呑み。もう片手には饅頭。
どうやら午後の一服時間のようだ。
「このお饅頭おいしい!何か上品な味がする!」
「ははは、上品でござるか。言われてみれば、そうでござるかもなぁ。」
小さな口で一生懸命饅頭を食していく薫の姿は、それはもう可愛らしくて。
はくはく言いながら饅頭を食す薫を、剣心はふわりと微笑みながら見守っている。
するとその視線に気付いた薫は、食している姿を見られるのが恥ずかしいのか
少し赤くなってぷいっとそっぽを向いてしまった。
薫が饅頭を口に頬張るたびに揺れる、薫の高く結い上げられた髪。
剣心はなんだか不思議な気持ちで、その揺れる髪を見つめていた。
「おいしかった!ごちそうさ・・・」
無事に饅頭を食べ終わって満足げにこちらへ振り返った薫の言葉が急に途絶える。
おそらく饅頭の感想でも話そうとしたのだろう。
どんな些細な事でも嬉しそうに語る、それが薫だ。
しかしその薫のたいして大きくない口は、覆いこむように塞がれていて。
どちらのものかも分からぬ甘い味に、薫は思わず声を漏らした。
「うん、上品な味でござる。」
「ば・・・///かっ///!!何考えてるのよぅ///ばかばか、信じられない!」
「お!?おろろろ;;」
薫が剣心の頬を両掌で包み込んで、力の限り圧迫する。
薫の掌の間でつんと突き出た剣心の唇が、実に苦しそうだ。
限界まで圧迫された剣心はようやく薫から解放され、開けた視界の前にはぷうっと頬を膨らます薫の姿。
「すまぬ、薫殿。ついつい身体が勝手に・・・」
「もう、知らない。今日は自分の部屋で寝るもん///」
「え;;!?それはっ;;ちょ…待った、薫ど・・・!?」
慌てて詰め寄った先には
ふわり 甘い空気
あまりにも甘くて、あまりにも耐えがたい
究極の不意打ち返し
>>終
御題提供:笹様
2005.3.23