神谷道場にとって、年末年始は忙しないもの以外の何者でもなくて。

今日も朝から薫殿は、出稽古先に挨拶をしに回っている。


確か昨日は波川道場、一昨日はお馴染み前川道場。

今日は紫我樂館で、明日は隣町の外村道場・・・と言っていたでござろうか。


何にせよ、忙しい御仁でござる。




朝一に家を出たから、多分そろそろ帰ってくる時分。

温かい甘酒…いや、昼から酒はやめておこう;;
気を取り直して、温かい汁粉でも作ってみようか。


伏せておいた鍋を手にした瞬間、玄関の戸がガラリと音を立てた。



「ただいまー。」

「おかえり。…おろ?弥彦は?」

「赤べこに行っちゃった。年始はお給料が沢山もらえるんですって。」

「そうでござるか…。大変でござるなぁ、弥彦も。」



他愛の無い話をしながら居間までやってくると、薫が思い出したようにすっと何かを後ろ手に隠した。

勿論の事、剣心が其れを見逃すはずも無く。



「何を持ってるんでござるか?」

「え゛!?な…何も・・・」

「ふーん・・・」



曖昧な返事をしながら、ふとした瞬間に薫の背後を覗き見ようとする剣心に、
薫は身体を捩らせながらゆっくりと後ずさりしていく。



「きゃ・・・っ;;」



そしてとうとう部屋の隅まで詰め寄られ、四方を塞がれて身動きできなくなってしまった。



「薫殿ー・・・」



薫に関するものはどうしても知りたいらしい、この男。

薫が弱いことを知っていて、甘えるような視線を薫に投げかける。



「もぅ・・・。驚かせたかったのに。…目瞑って?」

「おろ?」

「いいからいいから。目瞑ったら、口開けてね。」



薫の意図が分からずに、怪訝そうな表情を浮かべる剣心であったが
やはり薫の頼みは断れずに、言われるがまま目を瞑って口を開けた。


今の拙者は、きっと間抜けな面でござろうなー・・・;;


そんな事を思っているうちに、口の中に何やら固く小さなものが落とされる。

舌先で転がすとほんのり甘くて、つぶつぶとした刺激が舌に窪みを残すような感じがした。



「・・・こんぺいとう?」

「正解。今日ね、挨拶に行った所でいただいたの。こんぺいとうなんか久しぶりで、何だか嬉しくなっちゃって。」



嬉しそうに話す薫を見て、ついつい自分の頬の筋肉も緩むのが分かる。

じっと薫に見入っていた自分の視線に気付いたのか、薫は頬を染めて下を向いてしまった。



「あ…もっと食べる///?」



そう言って薫が差し出したこんぺいとうをじっと見つめていた剣心は、いきなりその白く細い指先ごと口に含む。

当然の如く、声にならない声をあげて、素早く手を引き戻す薫。



「な・・・///なな…なななな///!!」

「薫殿の指も甘いでござるな。」

「ば…馬鹿ッ///いきなり何するのよぅ///;;」

「薫殿も食べてみる?」



呆気にとられた薫の返答も待たずに、薫の細い腰を引き寄せて冷たくなった畳の上に組み敷く。

薫に抵抗する余裕も与えずに、その桜色に色づいた唇をそっと塞いだ。



「ふぅ・・・っ///んっ、む・・・ぅっ///っはぁ・・・」

「甘いでござろ?」

「ば・・・馬鹿ぁっ・・・///;;」

「おろ?今日は素直でござるなぁ。では、ご褒美にもう一粒・・・」









君が願えばいつだって

拙者はこの上ない快楽を、君に施してあげる。


それでもまだ、物足りないのなら

甘い甘い二人のお話を枕物語に



>>終

御題提供:めぐみ様
2005.1.1