クラ・・・
「・・・っ」
「剣心?どうかした?」
「いや・・・、何でも無いでござるよ。」
一瞬の出来事に自分が一番驚いた。
何とは無い、軽い眩暈。
突然の事に心臓は少しの高鳴りを見せたが、それはまたすぐにおさまった。
しかしため息と共に頭をかくんと垂れると、突如鈍い痛みが纏わりつく。
「剣心・・・?」
明らかに自分を疑う、薫の目。
その目は本当のことを白状しろとでも言うかのように、キッと自分を睨みつけていた。
「大丈夫でござるよ、さて昼餉は何が・・・」
薫殿から顔を背けその場から逃げようとしたとき、いきなり両頬を包み込まれて額がそっとくっつけられる。
薫殿の香りがふわりと広がり冷たい掌の感触に、頬の熱が吸い取られていった。
合いそうで合わない視線に治まりを見せた鼓動がまた忙しなく音を立て始める。
まるで時間が止まったように身体が動かなくて、言葉が出なくて。
「うーん・・・。何かちょっとだけ熱くない?」
「…い、いや、そんなことは決して・・・」
「微熱かしら?・・・いつもちゃんと髪拭かないから、こういう事になるのよ。」
「おろ;;」
半ば強引に手を引かれて、自分の部屋へと強制送還。
ちゃかちゃかと手際よく布団を引いて、その上に拙者の身体を寝かそうとする。
あれよあれよと言う間に緋色の上着物を脱がされて、抵抗する間もなく布団へと押し付けられた。
それから確か説教をされて、安静にするよう念を押されて。
ふわふわとする意識の中で、透き通るような声だけが心地よく耳に響く。
時折額に感じる薫殿の冷たい掌の感触が火照った身体にとても気持ちよくて、
己は本当に熱が出ているのかと錯覚してしまう程。
手が離れていくと何だか心細くて、寂しくて。
無意識にそうっと薫殿の方へ手を伸ばしていた。
「薫殿、こちらへ・・・」
「だ、だめ///そんなことしたら剣心の身体に障っちゃう・・・わ、よ」
「此処に来て・・・拙者を癒して・・・。」
「ば…かな事、言わないで・・・、っ///」
細く軽い身体を引き寄せ、布団の中へと引きずり込む。
君はきっと熱いくちびる
拙者のそれよりも、おそらく何倍も、何倍も・・・・
想いは、熱く、深く、限りない
耽美的な吐息に絡まる声が、頭の中を酷く掻き乱す。
酔わされたのは、誰?
身を堕としたのは、誰?
震え、戦慄くような感情がうごめく
そこは彼らの微熱区域
>>終
御題提供:日下 樹様
2005.4.8